以前の本便りからずいぶん経ってしまいましたが、ご主人様はあれこれと読書をなさったようですよ。
まずはご紹介!
「楽園のカンヴァス」原田マハ 著
画家アンリ・ルソーの一枚の絵を巡る小説です。これは本物か?あるいは贋作か?
美術の歴史を含めて、ピカソまで登場するハラハラドキドキのミステリーでもあります。実に素晴らしい力作で只々感嘆致しました。
面白かったです。作者は素晴らしい!是非、おすすめです。

「本日は、お日柄もよく」原田マハ 著
同じく原田マハ氏の小説です。結婚式から始まり結婚式で終わるハッピーなサクセスストーリーです。無力な一人の女性が一人前の女性になるために奮闘するのですが、実社会でありそうな事柄ゆえ、どこか応援をしたくなります。
原田マハ氏の小説はひたむきに誠実に頑張っている女性が多く、共感が持てます。痛快で、元気にさせてくれますね。

「家族八景」筒井康隆 著
以前ご紹介した三部作の一番目。家族というのはまさにミステリー。絵に描いたような美しい家族ほど、実はドロドロと本音を隠し続けているのです。
きっと、「家政婦は見た」というドラマはここから始まったのだろうと思いますね。人の心理描写が的を得ておりドキドキしながら読みました。永遠の名作ですね。とご主人様は言っておりました。

「くもをさがす」西加奈子 著
作者がカナダに在住していた時に癌が見つかり、その闘病を日記にしたものです。辛い現実を淡々と笑いを含め、しかも切実に描いています。
命、生きることの大切さ、決して説教ではなくあるがままの姿、思いで語っています。「明日はわが身」ではありますが、ご主人様は今、元気でいることは感謝しかないと言っておりました。感動作です。

「夜更けより静かなな場所」石井圭也 著
とある古書店で深夜に行われる読書会。悩みを抱えた男女6人の今と再生の話です。
本に触れあい、自分に向き合い見つめていく。そうしてやがて心は静かな場所にたどり着くのです。素敵で温かい小説でした。
読書会の中で課題図書が紹介されているのですが、これが実に面白く、実際にそのような本があるのだと思い調べていたら、これはすべて創作だそうで、ちょっと驚きました。二重の楽しみが有る小説ですね。

「工場」小山田浩子 著
芥川賞作家の本です。いつかの新聞にコラムがあり、ご主人様は興味があったので読んでみたそうです。
この街の人々は皆ある工場で働く。その工場で働くことは名誉なことでもあるのです。ある女性は不必要な書類をシュレッターにかける仕事を与えられた。そして果たしてこの仕事は必要で有意義なのだろうか?と考えるようになる。やがてある日、女性はシュレッターの中に入ってしまう。そんな話ですが、これは社会を映し出した小説で奥が深いと思いました。社会という組織は実に恐ろしいのかもしれない。そんなことを思いました。

「穴」小山田浩子 著
主人公は都会での仕事をやめ、夫の実家がある田舎で暮らすことになる。そして、ある問大きな穴に落ちてしまう、ようやくそこから出た時から「お嫁さん」と呼ばれるようになる。田舎の風習や言い伝えなどを姑、祖母から聞きながら、多少、反発を覚えながらも日々を過ごすようになるのです。やがて、自分の顔は姑の顔とそっくりになり、個人の顔ではなく「お嫁さん」になってしまったという小説です。

「庭」小山田浩子 著
動物、昆虫に焦点をあてた短編集です。何となく不気味で怖いのですが、それらの描写が事細かく素晴らしいと思いました。読後感もあまりいいものではないのですが、何故か考えさせられます。
ということで作者の小説を三冊読んでみました。文体は句読点や改行もあまりなく少々読みづらかったのですが、きっとこれが文学的なのかもしれませんね。とご主人様は言っておりました。
どれもがそれぞれの社会あるいは生きづらさを綴っており、その深さを浮き彫りにしている小説でした。

「君が手にするはずだった黄金について」小川 哲 著
こちらは直木賞作家です。作家である自分自身を主人公にした小説です。自分の周りにいる友人、知人たちを描いているのですが、人物の観察が鋭く、大変面白い小説でした。どうにも理解しがたい人物を何とか理解しようとする試みは、きっと優しさなのでしょう。実話のように思わせる創作です。違う作品を読んでみたくなりました。とご主人様は言っておりました。

本を読むのは楽しく、いろいろな知を与えてくれますね。ちょっとだけ賢くなったような気がします。とご主人様は常々言っております。