悲しい知らせ・・・

昨日の朝、突然、悲しい知らせを耳にする。
中村勘三郎さんの訃報である。
「信じられない。嘘でしょう!」とにかく吃驚し、寂しくなった。勘三郎さんは常に目線をお客様に向け、歌舞伎を愛した方。新しい風を吹かせ、いろんな方に歌舞伎を知ってほしい。歌舞伎を好きになってほしいと願った方。そして、歌舞伎の未来を誰よりも考えていた方であった。
今もなお、歌舞伎に人気があるのは、半分は勘三郎さんの努力と功績のお蔭だと思う。
歌舞伎という世界には、それぞれのオウチがあり、それぞれのオウチには長年守ってきた「お家芸」というものがある。重要な役というのは、限られた役者に与えられ、いくら実力のある役者でも、その思いは叶えられない。言わば、小さな世界なのだ。
そんな中、勘三郎さんは、実力があるのに陽の目を見ない役者に光を与え、引き寄せ、友として一緒に舞台に立つのだ。とても人として優しく、寛容な方だったと思う。
舞台では、常に新しい試みをしていて、「平成中村座」の型破りな歌舞伎をはじめ、コクーンでは今までにない演出で観客を魅了した。
勘三郎さんと共演した方は皆、勘三郎さんを好きになる。とTVでは言っていたが、勘三郎さんの歌舞伎を見たら、多分、殆どの方が歌舞伎を好きになるのではないか?と思う。それくらい魅力的な方でだった。ご主人様も大好きでした。いや、これからもずーと好きでいます。
思えば、ご主人様が歌舞伎が好きになったきっかけは、まさしく勘三郎さんでした。今から25年前、初めて歌舞伎を見に行った。浅草での「新春歌舞伎」。演目は忘れてしまったが、新春のふさわしい華やかな舞台で、なかでも歌舞伎の中で「タップダンス」を踊っていたのが印象的で今も忘れない。それが下駄をはき、わざと、危なっかしく踊るのである。もう、楽しくて楽しくて…堅苦しいと思っていたのが、こんな面白いなんて・・・。
そして、歌舞伎の世界に欧米文化を用いるとは・・それも「タップダンス」とは誰が考えるだろう?凄い人だな〜と思い、それはいつしか歌舞伎役者への尊敬の気持ちになり、歌舞伎好きの一歩となった。もし、勘三郎さんの芝居ではなかったら、歌舞伎はその日で終わっていたかもしれない。多くのファンを持つ勘三郎さん。ご主人様のように、勘三郎さんに魅せられ、歌舞伎に興味を持たれた方は沢山いらっしゃるのではないかと思います。本当に残念です。来年の新・歌舞伎座やいつの日か訪れるお孫ちゃんを交えての親子三代の共演を心待ちにしていたのに・・・・。
先月には女優の「森光子」さんがお亡くなりになり、その前には「山田五十鈴」さんがお亡くなりになりました。共に舞台に一生を捧げてきた大女優。多くを求めずひたすら芸にかけたその生き方は、とても美しく思える。
森光子さんのリズムのある軽快な演技、そして、山田五十鈴さんの女性から見てもゾクッとするあの色気。頭のてっぺんから指先まで、役そのものなのだ。素晴らしかったな〜。
そういう女優らしい女優が今はいない。
そして、世界に愛された勘三郎さん、あなたのような役者も今はいない。
家には勘三郎さんが勘九郎さんだったころのDVDがある。しばし、それを見て、勘三郎さんを思い出したいと思います。
心よりご冥福をお祈りいたします。