新・歌舞伎座

行ってきました・行ってきましたヨ。新・歌舞伎座に!
何と言っても、こけら落とし公演である。どんなに逆立ちしてもチケットが手に入ることもなく、諦めていたのだが、何と、ライアンの知人から、プレゼントされ、本当に有難いことです。
嬉しい〜〜。やっぱり、初めてのお芝居、観たいものね。
新歌舞伎座の誕生、その費用は430億円だという。その金額に吃驚。高いビルにはオフィスが入り、そして、歌舞伎の未来を予想し、何より、お客様に喜んで頂きたい思いで、踏み切ったそうです。詳しく知らなかったのですが、歌舞伎は、ずっと、民間の力で支えられてきたそうです。例えば、外国のオペラ座やミラノ座の運営は約3分の1は国の援助で賄っているという。
その昔の歌舞伎は単純に「大衆芸能」であり、役者は身分も低く、名前すら与えられず、どちらかと言えば、世間から蔑まれた世界だったのだ。音楽家や画家にしても、変人扱いだった時代である。役者もそれに値するのだろう。そんな悲しい歴史から始まったのだ。それが、今じゃ、「人間国宝」とも呼ばれ、国の宝物になるのだから、凄いですね。歌舞伎の人気が衰えを知らないのは、何といっても、ご贔屓にしてくださるお客様の力が大である。そして、お客様の期待を裏切らないよう、常日頃から芸を磨き、伝統と新たなものを提供し、自身を高めていく役者としての精進の成果でもある。それと、忘れてならないのは、民間から歌舞伎の世界に入った方々の存在で、こういう方がいなければ、歌舞伎も続かなかったと思うのだ。梨園という歌舞伎の系図を意味する世界は実に小さなもので、皆が看板を背負っている役者ばかりじゃ芝居は出来ない。黒子も含め、影となり、日向となり、看板に光を当てる役者がいてこそ、今の歌舞伎があるのだ。民間の力で成り立つ歌舞伎、まさにその通りだと思う。
さて、この日はお芝居も勿論ですが、新歌舞伎座、そして、その周辺の見学も楽しみにしていたご主人様。東銀座から歌舞伎座に向かう改札の先には「木挽町広場」があり、歌舞伎グッズが沢山あって、大いに楽しめる。芝居を観に行かなくてもそこに行けば歌舞伎を鑑賞した気分になってしまう程、楽しい場所である。その日はレジに並ぶのも大変なくらいの人・人・人でした。さて、会場に入り、またまた見学。「アラ!全然変わってないじゃない」以前と全く変わらぬ様子である。だが、音声ガイドというか、字幕ガイドもあるらしく、これも歌舞伎を楽しめる代物。座席は確かに少し、縦にも横にも広くなった感じで、ゆったり感がある。3階からでも花道が見えるし、お身体が不自由な方のためにエレベーターを設置したりと、いろんな部分で配慮を感じられる。今まで、歌舞伎は1日に2部の芝居があったのだが、これからは3部になり、料金もやや割高である。以前は、歌舞伎を見たくても夜が4時ごろ開演だったりで、仕事を持つ人は中々伺えなかったのだが、これからは行きやすくなるかもしれませんね。
さて、お芝居。まさに歌舞伎役者オンパレード。
掛け声もオンパレードで、○○屋!や××屋!といろんな声が鳴り響いていました。
ご主人様は午前の部に伺ったのだが、1日全部見れば、殆どの役者が登場するのだから、新歌舞伎座にかける役者の意気込みを感じてしまう。こけら落としは1年続くというのだから、今年は歌舞伎役者やファンにとっても、忙しくなりますね。
演目は・・・まずは「壽祝歌舞伎華彩」。
鶴は千年の齢を保つという伝説に因んだ作品で、喜びの舞である。新歌舞伎座の誕生にふさわしい作品。
染五郎さん、魁春さんの舞に藤十郎の凛々しい楚々とした舞が混じリ、実にゆったりした美しさがありました。
次は「お祭り」
江戸のあるお祭りを情緒豊かににぎやかで楽しい演目。
三津五郎さんはじめ、いろんな役者がはしゃいで踊って、面白かった。この芝居の添え書きに「十八世中村勘三郎に捧ぐ」とある。勘三郎さんが大好きな芝居で、この歌舞伎座で演じたかった演目である。ふと、花道を見ると、勘九郎さんと七之助さんが・・「あら!七緒八君もいるじゃない。」その瞬間、観客の目は勘三郎さんの目になりましたヨ。目を追うのは七緒八君なのだ。親ばかじゃないが、こうやってお客様が子供のころから役者を育てているのが、歌舞伎の世界。そこに勘三郎さんがいたら・・・なんて思ってしまいました。
最後は「熊谷陣屋」。以前にもブログに書きましたが、実に悲しい話である。戦乱の世、敵の「敦盛」を討ち取りたいのはやまやまであるが、「敦盛」は後白河法皇の子供である。殺めるわけにはいかない。苦肉の策として、わが子を身代りに・・・・無情の世の辛い話なのだ。
綺麗な方だと思っていたら、玉三郎さんでした。やっぱり一番の女形玉三郎さんですね。人間国宝にもなられて、益々、美しさに磨きが掛り素敵でした。仁左衛門さんが出たときは会場は割れんばかりの拍手。体調が気になるところですが、お元気そうで安心。それにしても凄い人気ですね。
そして、吉右衛門さん。主人公の辛い役どころを見事に演じておりました。この芝居は何度も見ているが、吉右衛門はピカイチ。先代の吉右衛門さんがこの役を当たり役とし、いわば、お家芸である。伝統を守り抜くという意気込みを感じられたお芝居でした。
やや短い時間だったけど、見終わってかなりリッチな気分のご主人様。それから、また、見学に・・・歌舞伎座の3階に「思い出の歌舞伎座」というコーナーがある。そこには、今まで、歌舞伎を支えてきた役者、そして、すでに他界した方々の写真がかざってある。記憶にある名を目で追うと、富十郎さん・・・芝翫さん・・・エ!勘三郎さんと團十郎さんの名が・・・あ〜〜そうか。そうだった。ここにいる方になってしまったんだ。信じられないけど、そうなのよね。納得するまで、ちょっと時間がかかったけど、今という時間を胸に叩き込み、その場を離れた。
歌舞伎オンパレードのようなこけら落とし公演。ベテランもいれば、若手もいる。思い出コーナーを後にし、世代交代の公演でもあったと感じた。数々の先代が作り上げてきた歌舞伎。人として扱われなかった時代から人間国宝と評価されるまでになった歌舞伎。世代が変わっても、その遺志は決して忘れて欲しくない。お客様というのは我儘である。歌舞伎役者だからといって、何でもOKではないのだ。スキャンダルや暴力、人としての行いに問題があれば、すぐさま離れてしまう。先代の遺志を継ぐというのは大変な事であるが、頑張ってほしい。そして、ファンとして、ずーっと歌舞伎を見続けていきたい。
歌舞伎を後にし、ちょっと銀座をブラブラ。何故か人が多く、活気に満ちているように感じた。これは、きっと歌舞伎座のせいかしら?
銀座の一角には「カブキミクス」の風が吹いているようでした。それは心地よい風でしたヨ!