ご主人様の本便り

 最近、風が強く、とても寒く感じます。いきなり冬にも戻ったような…これも春になるため、桜をきれいに咲かせるためなのかもしれませんね。

 さて、ご主人様の本便りです。

 まずは李箱作品集「翼」 李箱(イサン) 著

 新聞の書評にあり、読んでみました。李箱は韓国が日本の植民地の時代に生まれ育ちました。日本語も流暢で芥川龍之介の本をこよなく愛したそうです。韓国では李箱のことを天才か、狂人か、あるいは凡才かと言われた人でもあります。

 超が付くほどの学歴と境遇に恵まれ、エリートの道を歩んでいたのですが、重い病に倒れ、やがては好きな女に養われる身となり若くして亡くなります。その男の哀しさ、不甲斐なさを自虐的であるものの、ユーモアを混ぜて、面白く語っています。その文章は太宰治か、あるいは梶井基次郎か、それほど、素晴らしい。韓国では「李箱文学賞」があるそうです。

「花を見るように君を見る」ナ・テジュ 著

 ご主人様は韓流ドラマが好きでよく見ているのですが、ドラマの中でしばしば〈詩〉が出てくるのです。韓国の方々は〈詩〉が好きだそうですね。この詩集は図書館でちらちらと見ていたんですが、やはり、詩集は手元に置きたい。

「花を見るように君を見る」なんて素敵な言葉なのでしょうか。美しい花々もやがて枯れていくのですが、その枯れる様までも美しく愛でたい。そうありたいと思います。そうしたいと思います。優しい気持ちになれる詩集です。

「愛しなさい。一度も傷ついたことがないように」リュ・シファ 著

 これも韓国の詩集で素敵な本でした。心がざわつき寂しく、少し疲れている時に読みたい詩集です。

 傷つくことを怖がることはない。人を好きになることは素晴らしいことなのです。からっぱな心で新しい自分になって人を愛するのです。やがては貴方の心の傷も癒されるでしょう。こちらも優しくなれる詩集でした。

 「愛は苦手」山本幸久 著

 アラフォーの女性に焦点を当てた小説です。アラフォー(40歳前後)というのは女性にとっては一つのターニングポイントで悩ましい時でもあります。それぞれ境遇も違う女性たちが問題を抱えながらも、逞しく、善処する有様が頼もしい。作者は男性であるのですが、実に女性の心理を描いて驚きました。男性が女性の気持ちで〈男〉を書くのではなく〈女〉を描くのです。これってすごく難しいことではないかしら?とご主人様は言っておられました。楽しく読めて良き本でした。

「ナッシング・マン」キャサリン・アイアン・ハワード 著

これも新聞の書評があり、読んでみました。元・警察官であり、今は警備員をしている男は実は連続殺人犯だったのです。被害にあった家族の中で生き残った一人の女性がこの事件をほのめかす小説を書くのです。その小説が評判となり、犯人を追い詰めるきかっけとなるのですが…

 現実と小説を混ぜ合わせ、面白い仕掛けとなっています。ナッシングマンという題名がピッタリなミステリーでした。とご主人様。

 さて、ご主人様は大河ドラマ「光る君へ」をご覧になっているようです。それもあり、今年は「源氏物語」をしっかりと読みたいと言っておりました。

こちらは少し風変わりな源氏物語です。

「女たち三百人の裏切りの書」古川日出男 著

 数々の源氏物語があるものの、それは間違いだらけである。何故ならば「私は書いていないからだ」とあの紫式部がお怒りになり、怨霊となって、真実を伝える話なのです。これは源氏物語を良く知る方が読んだら最高に面白いと思いました。痛快時代劇小説でした。

光源氏ものがたり」田辺聖子 著

 著者の田辺聖子氏は大の源氏物語ファンなのです。「どうして私はこんなにも光源氏が好きなのか」を説明してくれる解説書、いわば入門書で、とても分かりやすく、読んでなるほどと唸らせる書物です。まずはここからですね。

「私本・源氏物語田辺聖子 著

 源氏物語はいろんな作家が書いているのですが、というか訳しているのですが、一番優しくわかりやすいのはやはり、田辺聖子氏では?とご主人様は思っているようです。

 さて、これは光源氏の従者のよる小説です。あゝ、面白かった。関西弁で普通に話している言葉で語られ、従者から見た光源氏の我儘で世間知らずのボンボンゆえのお馬鹿さんぶり。けれど、お茶目で純でそんなところが可愛いのですね。感性豊かな痛快源氏物語です。

 三月は何となく慌ただしく感じますが、もうすぐ桜ですね。春を愛でたいと思います。とご主人様は言っておりました。そして、これから「源氏物語」を読むそうですよ。