オーダーメイド

オーダーメイドとは、貴方だけに、貴方の為だけに作られた世界に1着だけのお洋服。
実は、ライアンが知人より、とあるお祝いにと、オーダーシャツの御仕立券を頂いたのである。タンスの中をみれば、その昔頂いた生地付御仕立券もあり、(なんと10年も前だったわ)せっかくだからオーダーで仕立ててもらいましょうと、大手デパートにお出かけ。専門のアドバイザーは実に素敵で親切な方でした。
周りを見たら、同じように御仕立券で相談している方も沢山いて、実際、そういうものは、まず自分で買うことは少なく、殆どがプレゼントされたもの。お客様に満足して頂きたい。そして、それを贈られた方にも「良かった」と言う安心感を与えたい。それは、やがて「やっぱり○○デパートで買ってよかった」と言う評判にもなるのだ。アドバイザーの丁寧な対応の中にいろんな思いを感じ取れた。
では、「サイズを測りましょう!」とライアンの体をあちこちとメジャーでぐるぐる巻きにするのだけど、初め、面倒くさそうなライアンも満更でもない様子。
そんな様子を見て、ふと、ご主人様はお父様のことを思い出しました。お父様は洋服仕立て人で、昔は、ミシンが3台くらいあり、その中にロックミシンもあったっけ。ミシンの音と糸くずで育ったものである。
洋服を作るって大変な事である。だって、人の身体の立体的な丸みを平面の生地から作るのだから、型紙を作る際の計算式はどう考えても理解できず、ましてや、いろんな体型を考えたら、理屈や基本もないのである。
あるデザイナーはまず、マネキンに生地を被せ、形を整え、そこから裁断し、型紙を起こすそうだ。一つの服には吃驚するような感性と作業があるのである。
ミシンでざぁーと縫うのは簡単な事だけど、問題は「ボタンホール」。ワイシャツは違うけど、オーダーメイドなら、それは、全て手縫いで、これは時間もかかり、神経も使う仕事。お父様はいつかこんなことを言ってました。「一番、大事なのはボタンホール。なぜなら、一番使うところで一番傷むところだからね。肝心なとこはきちんと仕上げないといけない」と。
そのボタンホールは少しの隙間もなく、ぎっしりと同じ顔の縫い目を連ねていた。まさに職人技!綺麗な刺繍であり、芸術品のようでもあった。ボタンホールは初めはややきつめに仕上げる。それは、使ううちに少しずつ伸びる事を考えての事なのだ。
何だか、茶道の教えのようである。「肝心なことはきちんとする」「面倒くさいことを面倒に思わない」「苦労を苦労と思わせない」
人としての美しさを子供の時から、まるで、遺言のように聞いていたのね。
ふと、見れば、ライアンは手をあげたり下げたりしている。
『右腕は1cm長いですね』(ヘェ〜そうなんだ。)
そしたら、分度器のようなものをだし、『右肩は少々下がってますね』(ここでも へぇ〜そうなんだ。)
『首回りは人差し指1本分の余裕を持たせましょうね』
『ボタンはここまでつけましょう。そのほうがズボンに入れる際、シャツがキレイに収まります』
『ワイシャツは自宅で洗濯ですか?クリーニングですか?クリーニングなら、ボタン部分は二重が良いですね。』
『袖の形はやや丸みを帯びたほうがいいですよ。よく使うところですから、角があると傷みやすくなりますから』
『ネームはどうしましょう?袖に入れるのもお洒落ですよ』
いろんな言葉が飛び交い、その都度、ヘェ〜〜。と感動するご主人様。おもてなしが沢山散りばめれているこのアドバイス。それも職人技。
1枚ずつ、いろんな条件を出したけど、何がどうしたかしら?すっかり忘れているけど、それは見てのお楽しみ。
世界に一つのシャツに腕を通すライアン、早く、見て見たいワネ。
贅沢なプレゼントには、これまた贅沢な世界に一つの笑顔でお返ししたいですね。