ご主人様の本便り

 今日はお墓参りに行きたいと思っていたのですが、この雨です。九月の連休は台風の影響で、本当に残念ですね。ご主人様もがっかりしているようです。

 さて、こんな時は読書です、本を読むご主人様です。最近、作家別に読むことが多いようですね。まずは井上荒野氏です。本当に文章が上手な方で、つい、引き込まれてしまいます。

 「しかたのない水」

 これはスポーツクラブのインストラクターや会員を軸に、人には言えない秘密とか、一癖ある男女との恋愛が描かれていて、深刻なような笑えるようなズルズルと引き込まれていく小説でした。

 「静子さんの日常」

 75歳の静子さんの日常を描いたものです。気品があって正義感があって、時おりハチャメチャにもなるけれど、いつも前向きな姿勢にはあっぱれとしか言いようがありません。こんなおばあさんになりたいと思いましたね~優しい気分になりました。

 「切羽へ」 きりはへ

 小さな島で夫と暮らす女性。ある日、この島に本土から一人の男性がやってくるのです。そして、不思議な魅力のある男に、次第に惹かれていく。恋の雫がぽたんとぽたんと落ちていくそのなまめかしさ。心の中を隠しているものの、周囲には、その恋心が丸見えなのです。その気持ちは切羽(トンネルを掘る先端)。先が見えない、何も見えない状態になっていく。しかし、トンネルが出来上がると、同時に切羽の気持ちは消えていくのです。直木賞の作品です。

 「結婚」

 これは結婚詐欺の男と、詐欺にあった女たちの話です。どうして結婚詐欺にあってしまうのか? 結婚とは何なのか? 面白く読みましたよ。

 「アカペラ」 山本文緒 著

 山本文緒氏の小説は好きでいくつも読んでおります。生きづらさが描いていることが多くこの本もそうでした。それぞれの短編を読み進めていると、少し、苦しくもなるのですが、最期には優しい気持ちになります。

 そして、アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ氏です。フランスの詩人で作家です。

 とある新聞である方がこの作家が好きで愛読していたと書かれていたので、どんな小説だろう思い読んでみました。幻想小説なのですが、非常に文章が描写力に優れ、詩的で官能的で、とにかく驚きました。ご主人様はやはり難しく読むのが大変だったと言っておりました。

 まずは「オートバイ」

 主人公は結婚したばかりの女性、しかも愛人がいるのです。ある日の朝、彼女は家を出てオートバイに乗り、彼に会いに行こうとする。オートバイに乗りながら、昔のことを思い出いたり、愛人のことを考えたりとするのですが、その描写が素晴らしくて、フランスのその街にいるような気分になりました。そして、最期は・・・

 「すべては消えゆく」

 これも、パリの地下鉄で、一人の女性と出会い、心を奪われてしまうのです。そして、その女性の手に思わず接吻をしてしまう。そこから淫らで美しく、まさに官能的な幻想が始まるのです。

 ご主人様は友人や、あるいは雑誌や新聞などで、評判が良いとか、おすすめの本の紹介があると、興味にあるものは、つい買ってしまったり、図書館に予約を入れたりするそうです。このアンドレ・ピエール・ド・マンディアルグという作家も、読んだこともなく知らなかった作家なのですが、やはり、読んでみて良かったと言っておりました。ちなみに、「オートバイ」はアラン・ドロン主演「あの胸にもう一度」と映画化されました。そして、「ルパン三世」の峰不二子のイメージは、この「オートバイ」の女性をモデルにしたそうですよ。皮のスーツを着てクールにバイクにまたがる姿。カッコいいですね!

 ご主人様はとある新聞を取っているのですが、(朝日新聞なんですが)キャンペーンがあり応募したところ、当選したそうです。賞品はなんと〈天声人語書き写しノート〉等でした。これはもっと新聞を読み、勉強をしなさいということですね、きっと。

 真面目に天声人語と向き合います。とご主人様の声。