「私を離さないで」

「私を離さないで」確か、以前、本を読んだことがあるご主人様。
今や、映画、舞台、そして、昨日からドラマにもなっていますね。
誰かの為に生まれてきた人たち。誰かの命を救う使命を持った。いや、そのように洗脳された人たちの話。臓器提供者の話である。
かなり、ショッキングな内容で、勿論、架空の話であるが、あながちそう思えないことが、何とも言えない恐ろしさを感じる。

かつて、歴史を辿れば、貧しい人は子供を売り、生活の糧にしていたこともある。今だ、「男尊女卑」のもと、女性や子供を軽視する方々もいるし、アメリカ人は黒人を奴隷とし、世界には白人である事だけが、一番のステータスと思い込んでいる方もいらっしゃる。
そして、今、医療現場において、患者を救うために、誰かの「死」を待ち望む姿もあるのだ。

作者は、カズオ・イシグロ氏。長崎県生まれで、イギリス育ちのイギリス人である。「日の名残り」が有名ですね。
数々の賞賛を浴びている作家である。こうゆう方が、日本から生まれたこと、日本人として自慢したくなります。
これは、社会に対しての不条理を追求したもので、「格差社会」の牽制でもあるという。

今や世界は格差社会が広がり、日本もその仲間入りをしている。テロ事件も格差が生んだものなのだ。
どのような時代が訪れても、「命」は平等であり、そこに貧富の差や、知識の差がない事を願う。また、何が正しい社会理念なのかは分からないけれど、少なくとも間違った理念を信じることなく、その人らしく「生」を全うできる世の中であって欲しい。

今は亡きライアンの前に立ち、再び「命」の問いかけをするご主人様。

この本は10年前にかかれたそうだ。10年前って「格差」って言葉が騒がれていたかしら?だとすれば、カズオ・イシグロ氏は凄い作家だと、改めて思った。